(1)英雄は対話する
恩田木工の場合
[2:実践編]
(1)英雄は対話する
恩田木工の場合
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夏の陣で、大阪方について討ち死にした真田幸村は有名である。その幸村の兄、信之は徳川方についたので、信州上田から松代へ、4万石加増のうえ、移封された。
信之を初代藩主とする信州松代藩六代・幸弘のころ、幕府から命ぜられる公共事業や洪水の影響で、藩財政は窮乏していた。藩士の俸禄や知行が削られる「半知借上」が当たり前になり、領民からの年貢も減る一方。
給料は下がる、ボーナスはなくなる、マイホームも、マイカーも手放す。いつの時代も、サラリーマンは辛い。
当然の結果として、賄賂が横行する。経済が破綻すると倫理観も薄れる。これも、現代と同じである。
さて、その頃、わずか30歳の末席家老が財政改革担当者として抜擢される。恩田木工(おんだ・もく)という人物である。
恩田は藩内に徹底的な質素倹約を命ずる一方、妻には離縁、子には勘当、家臣には解雇を申しつけた。
家族と家臣が動揺して反問してくる。そこでこう答えた。
「藩内の財政を立て直す大役を仰せつかった以上、私自身は絶対に贅沢はしない。嘘もつかない。私がこれを守らなければ、皆にそれを強いることもできまい。しかるに、お前たちはこれからも、贅沢を求めるだろう。嘘もつくだろう。だから縁を切るのだ!」
主人の覚悟を知った家族・家臣一同、贅沢をしないこと、嘘をつかないことを誓った。恩田家ではそれから毎食、一汁一飯を続けたという。
これを知った藩士たちの動揺は想像に難くない。若造の末席家老が急に抜擢されても、大したことはないと高をくくっていたのに・・・。
賄賂を取っていた汚職藩士などは戦々恐々としたに違いない。「きっと切腹を申しつけられる。いや打ち首か」と、震えただろう。
ある日、藩主・幸弘が恩田の報告を聞いて怒った。
「そのような貪官汚吏はみな処罰してしまえ!」
しかし、恩田は幸弘にこう言った。
「みなやりたくてやったのではありません。衣食足りて礼節を知ると申します。うち続く災難でみなそれなりに苦しんでいるのです。人間、そう簡単に悪事など働けるものではございません。生活のためにやむなく悪事を働いたに過ぎません。生活のために悪事を働く知恵があるなら、きっと良い働きをすることもできるに違いありません。ですから、彼らを一旦、私の配下にさせて下さい。きっと変えてみせますから・・・」
「お咎めなし」の処置を知った藩士たち。恩田の徳に感じ入るとともに、自分の不明を恥じ、役目を真面目に果たすようになった。領民へのゆすり・タカリをやめ、領民からの租税の洗納(翌年分の年貢を前もって徴収すること)を廃止。領民の信頼を取り付ける一方で、すでに徴収した年貢を返還しないことを領民に了解させた。
それまで常態化していた「上から下へ」のお役所目線を払拭して、領民と対等の立場で対話する「双方向コミュニケーションの視点」へと一気に転換したのである。
それ以降、徐々に財政は改善されていった。
この恩田木工の姿勢は、まさにマーケティングの肝である。
ポイントは3つ。「急がない」「人」「対話」である。
こちらの負債を消すために、あちらで借入を起こしたり、ポッと出の新規事業に手を出したりして、結果、負債を膨らませてしまう社長がいる。自分は会社の経費で建てた一戸建てとベンツ(ベンツが悪いというわけじゃありませんよ)に乗っているのに、コピー用紙を節約しろ、休日返上で働けと命ずるばかり。
資金繰り状態に焦ってしまって、大事なことを見落とすのである。資金繰りが悪化したのは、様々な状況が複雑に絡み合ってのことである。一部の怠慢社員を叱咤しても、微々たるコストカットをしても、儲け話に乗ってみても、こんがらがったひもの固まりは簡単には解けない。だんご結びが何十個もできているひもを無理矢理引っ張っても、余計固くなってしまうだけだ。
焦らず、ゆったりとした気持ちで何が大事かを見きわめるしかないのだ。
そして、その「大事なこと」の真ん中には、つねに「人」と「対話」の問題が横たわっている。
それまで資金繰りがうまく行っていたのも、だんだん悪くなってきたのも、すべて社員同士の対話、会社と顧客との対話、銀行や仕入れ先などの関係者との対話が鍵を握っていたはずである。
その対話の積み重ねから、組織の持っている暖かみとか、プロが持っている独特の誇りとかが滲み出ていたのである。それが相手の感情の中で、「信頼」として認識されていたのである。だから、商品が売れた、売上が上がっていたのである。
対話の積み重ねが少なくなればなるほど、当然、相手の心に宿っている「信頼」は薄れる。それが売上不振となり、相対的なコスト増を引き起こし、財政全体に不具合をきたす。銀行も信用しなくなる。借入を起こせなくなる。
対話をなおざりにしているから、新規事業計画書などまともに書けないし、書けても、相手に伝わらない。協力者が集まらないのである。
恩田木工の取った戦略は、それは巨細となく研究してみないと分からないが、おそらく大きく区分すれば3つほどに過ぎないのではないだろうか?
人材の「人財」化。対話システムの確立。嘘の廃止(内部牽制システムの確立)。
「自ら腹をかっさばく精神訓練を受け、恥の文化を持っていた武士だからこそ可能だった」と言ってしまえばそれまでだが、「人」と「対話」の問題にじっくり光を当てれば、たいていの問題は氷解するのではないか?
恩田木工の事例は、そのことを我々に教えてくれる。
英雄偉人のブランディング秘策(メソッド) その一、
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英雄は対話する。対話の仕組みを作る。
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組織におけるリスクの源泉は、すべて「人」と「対話」に起因していると言って良い! 具体的に誰と誰の、どことどこの対話が、どのように目詰まりしているかを調べてみるのじゃ! また、社内外において「言葉」を見直すのじゃ! どこにも真似できないサービスが売りなのに、「いやいや、うちはただの●●屋ですよ!」と自己紹介しているような不届き者がいないか調べてみるのじゃ! とはいえ、その者を怒るのではなく、なぜ、そのような言葉の幼稚化が起こったのかを調べるのじゃ! |
いずれ、「修養編:英雄ブランディングのインストール法」にてワークシート化します。
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