阪本啓一先生との出逢いから(3)
「つながっている感」がマーケティングの基礎 Vol.2
[4:現代編]
阪本啓一先生との出逢いから(3)
「つながっている感」がマーケティングの基礎 Vol.2
[4:現代編]
3.成功という概念も分断している。
果たして、成功って何だろう?
本を出すこと? お金を儲けること?
礼節も忘れて?
他人を馬鹿にして?
先人が築いてきたものを顧みず?
次世代に何か大切なものを遺そうという気概も忘れて?
ただ自分のポケットに億単位のお金が転がり込んでくること?
それが成功?
自分の人生は誰の役に立った?
100年後に自分が築き上げた価値が継承されていることのほうが嬉しくない?
それは死んだ後の話だから興味がない?
そりゃ、お金はあったほうが良いし、志が高ければ高いほど、お金を稼ぐことに一所懸命にならないといけない。ノブレス・オブリージュ(Nobless Oblige)という言葉がある。「高貴な義務感」という意味だ。「金や地位があるなら社会に還元しろ! 社会奉仕したいなら稼げ、えらくなれ!」ということだ。ドラマ「躍る大捜査線」でも、主人公・青島刑事(織田裕二)に、先輩の和久刑事(いかりや長介)が言っていた。「正しいことをしたければ偉くなれ!」
しかし、金をつかむため、偉くなるために、他は犠牲にしても良いの?
セレブになることって、大切なことを犠牲にしなくちゃいけないほどの急務なの?
自分がセレブにならないと、誰かが困るのか?
ゆったり、たおやかに、大切なことを忘れず、大事なことを犠牲にせず、すべての現象が複雑につながっていることを実感しながら、価値を作り上げていって、その結果、お金が入ってくるものじゃないのか?
人間として大切なことを忘れて脇目もふらずやらなくてはならないほど、Businessは忙しいものなのか?
ここで、阪本先生の言葉を引用したい。
「ビジネス」(business)は、「busy」(ビジー)を語源とします。ビジー、すなわち忙しいことと「スロー」という形容詞とは本来相容れないものと捉えられがちです。あたかも「黒い白鳥」のように。しかし、本書でいう「スロー」は、速度が速い、遅い、という場合のスローではなく、「ほんもの」という意味で使っています。ほら、最近よく耳にしますよね。スロー・フードやスロー・ライフといった言葉。これらと同じ使い方をしています。「ビジネス」を日本語にすると、「商い」です。古来、「商いは牛のよだれのごとし」と言われ、いつまでも細く、長く、途切れることなく続くことが善し、とされました。花火のようにドーンと派手なヒットを出しても、数年後消えてしまったら、それは本当の意味での商いとは言えません。
阪本啓一 「スロービジネス宣言!」(日経ビジネス文庫) まえがき
4.「ほんもの」のビジネスは分断しない。
船着き場で紙テープのお別れをしたことがあるだろうか?
フェリーから紙テープが投げられ、桟橋にいる人はそれを握りしめる。
何十本という色とりどりの紙テープが、甲板と桟橋の人と人をつないでいる。
フェリーのエンジン音でお互いの声は聞こえない。その紙テープだけが、思いをつないでいる。そんな紙テープは、フェリーの速度があがると、徐々に伸びていく。
そして最後にはプツンと切れて、海面に落ちてしまう。
阪本先生のおっしゃる「スロービジネス」を、私はこの紙テープのイメージで頭に焼き付けている。
現代の「金儲け主義ビジネス」は、いかにもそっけない。
紙テープで人と人をつなぐ感覚はどこにもない。
何の余韻も感動もなく、「富」という名の港を目指して海面をすべるハイテク制御の高速艇のイメージだ。船と陸地をつなぐ手段はインターネット。紙テープが手に触れる生な感覚とは無縁の、無機質な情報の行ったり来たり。
マーケティングって、そんな無機質な情報の体系なのだろうか。
スロービジネスとは、にぎりしめた紙テープがいつまでも切れないように、ゆったり進むことを前提としている。
マーケティングの役割は、人と人とを結ぶ紙テープを太くし、さらに増やしていくことである。そして、その紙テープを通る、メッセージや情報を読みとる仕事だ。
企業が発信するメッセージ、ユーザーや生活者が発信するメッセージ。その伝達媒体である紙テープが切れないように、ゆったりと船を進めながら、紙テープの強度に応じて、船のスピードを遅くしたり、速めていく。それが、マーケティングであり、マネジメントの感覚だ。
ちょっと儲かったからと、豪遊したり、自社ビルを建てたりする社長は、この紙テープの感覚を持っていない人だ。もしくは、持っていたのに忘れたのだろう。
会計はこの紙テープ感覚を確かめるための一つの自律機能である。だから、マーケティングはリスクマネジメント、ことに、会計の感覚と密接に関わっている。
紙テープの向こう側を握っているお客さんがいまどんな感情を抱いているか、またそのお客さんの群れがどんな共通感情を抱いているか。そういったことを紙テープのしなり具合・張り具合から感じ取ることが経営者・マーケティング担当者の感性として不可欠だと思う。
次回予告:2,3日中に掲載します。
>> 5.つながっている感は、知性・感性・身体性に宿る。
>> 6.つながっている感を広める、そして深める。
>> 7.「森羅万象はつながっている」
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