【第1章 憧れることの効用】
(2)憧れると心が美しくなる
>>> 1.三つの心で人は生きる
[1:理論編]
【第1章 憧れることの効用】
(2)憧れると心が美しくなる
>>> 1.三つの心で人は生きる
[1:理論編]
その複雑さの正体は、前項で述べてきた「互助本能」である。人間同士互いに協力しあってコミュニティを守り、その結果、自分の生存本能を満たす。これを「目的の二元化・交差化」と呼んだ。
しかし、この互助本能こそが、人間を他の動物よりも上位に位置づけているものである。これがなければ、人間もただのケモノである。
さて、人間の脳は複雑だが、それ以上に複雑なのが心である。
この図から導き出される当然の帰結として、人間が自己の生命を維持する動機は三つ考えられる。
一つ目は、動物すべてが持っている本能。生存本能である。
二つ目は、人間だけが持ち得た生存本能をより効果的に満たす本能。つまり、互助本能である。
そして、三つ目である。
三つ目はこの図には表出していない。
二つ目の互助本能の裏面とも言うべき本能。つまり、復讐本能である。
動物はきわめて原始的な方法でしか自己の個体を守ることができない。おのれの牙と爪しか自分を守る方法がない。一方、人間は火・道具・言葉によって社会を作り、その社会の仕組みによって社会そのものを守る。社会の一員である自己を守る。これが、人間だけが持っている文明文化というものであろう。
しかし、その反面、動物にはない苦しみを背負ったとも言える。
それは、「自己と他人を比べて嫉妬する心」である。
他人を助けることで自分を守る「互助本能」は、コインの表でしかないのである。裏には、「報いられない不満」「他人からの施しを求める依存心」「他人の不幸を喜ぶ嫉妬心」がひそむ。
動物は互助本能を持たないか、もしくは人間よりもより少なくしか持っていないため、他の種や個体を嫉妬するということがない。動物が自己の爪牙を使って他の個体を倒すのは、あくまでも自己防衛か食糧獲得活動である。非常にシンプルである。
しかし、人間はいかに食べ物が足りていても、心が満たされない時には他人を殺すことがある。純粋な生存本能によらずして、自分以外の個体を傷つけるのは人間だけなのだ。
皮肉なことに、互助本能という尊い仕組みは、その本能が満たされない時には、他人を破壊することを選択してしまうという危険性を孕んでいるのである。
「心を美しくする」というテーマは、互助本能のこの二面性を解明することから始めたいと思う。
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