【第1章 憧れることの効用】
(1)憧れると頭が良くなる
>>> 10.憧れると頭が良くなる
[1:理論編]
【第1章 憧れることの効用】
(1)憧れると頭が良くなる
>>> 10.憧れると頭が良くなる
[1:理論編]
「憧れの人物は?」
これまで機会があれば会う人会う人にこの質問をしてきた。その答えには大別して3つのパターンがあることに気づいた。
A:矢田亜希子! だって同性からも異性からも好かれてる。とにかくステキだと思うわ!
B:やっぱりイチローかなぁ~。同じ年であんだけの活躍できてあの年収!! 男なら憧れるでしょう?
C:事業家なら坂本龍馬。世間では彼の自由奔放な発想が良いとか言うけど、僕は、あの「物事を大掴みする感性」は経営者には必要だと思うね。
これまで、人間というものについて、頭が良いということについて、きわめて偏見的な私見を展開してきた。我ながら理屈っぽい理論だと思う。しかし、それもこれも、「憧れる」という概念の誤解を解きたいためだ。
私が定義している「憧れ」とは想念ではない。行動である。「憧れる」とは、「憧れの念を抱く」という意味ではなく、「憧れを行動化する」という意味であると考えている。例えば、上記の答えのうちAとBは「憧れ」ではない。Aは「羨望」であり、Bは「諦観を含んだ軽い嫉妬」である。
A,BとCの違いを具体的に見てみよう。
Aと答えた人は、外見と知名度を羨んでいるだけである。子どもがアニメヒーローに夢中になる感覚とさほど変わらない。無邪気である。Bはネガティブである。言下に、「ワタシは不遇だ。イチローは恵まれている」といった拗(す)ねがある。大人になって色んな事柄を学んでいくと無邪気さが無くなっていく。「どうせワタシにはできないに違いない。原因はワタシの外にあったに違いない。ワタシは悪くない。運が悪かっただけだ」と思いこむのである。こういう心を「陰妬」と言う。
一方、Cの答えは、A,Bと大きく異なる。
それは、坂本龍馬という人物の通俗的イメージではなく、人間的特徴に関して独自の視点を持っているということだ。「坂本龍馬は、物事を大掴みする感性を持っていた」と判断する根拠を持っているということである。さらに、「その感性が経営者には欠かせない」と判断していることも重要である。経営者の能力に関する自説を持っていることが分かる。
このことから、Cの人は、「ワタシは経営者、もしくはそれを目指す人間であり、ワタシが理想とする経営者になるには、坂本龍馬のような感性を身につける必要がある」と考えていることが想像できる。
つまり、「ギャップを分析している」ということである。ギャップが認識できるということは、その差を埋める方法を知っているということである。方法は戦略とも言い換えることができる。行動はギャップの分析から始まるのである。
ギャップ分析 → 戦略 → 行動
さて、昨年、ある会社のオーナーに請われて社員さんを対象にしたセルフブランディング講習を実施させて頂いたときも、この質問をしてみた。オーナーさんを含めて10名。その時も、面白いことにこのパターンに分かれた。さらに、その人物の特徴をどこまで知っていいるかどうかを知るためにワークシートを作り、書き込んで貰った。
その結果、オーナー以外の社員さんは、親や上司や女優などを憧れの人として掲げる傾向が強かった。またその特徴は、見た目や誰でも知っている業績などに終始していた。「優しい」「頭が良い」「キレイ」などといった一般的な特徴を箇条書き的に挙げるだけであった。
一方、オーナーは、同業種の先輩を掲げ、深く交際していないと知り得ないような情報を事細かく網羅していた。そして、そのすべてについて自分との差を認識していた。だから、ワークシートには所狭しと文字が書いてあり、その人物のことを想像しながら一所懸命書いたことが一目瞭然だった。
このことから、憧れるという概念を正しく理解し行動化する習慣のある人は、戦略について考えねばならない立場に立つ確率が高い、つまりリーダーとしての道を歩む傾向があるということが分かる。
ポジティブシンキングと上昇志向が、リーダーシップの要件であることは誰でも了解済みのことであるが、実は「憧れる」ということがとても重要な価値観であることはあまり気づいていない。しかし、憧れるという概念一つで、リーダーの座にある人とそうでない人の違いは明確に出るのである。
さて、憧れを正しく行動するためには一定の思考プロセスが必要である。
ギャップを分析しなければならないのだから、「自分」というものに関する豊富な知識と感性が必要となるのは言うまでもない。交差点の理論から言えば、自分を知るためには、時間軸と社会軸、そしてそれが交わる点を中心とする円(他人との関わり)をよく理解するということである。つまり、
●歴史から学ぶ謙虚さ
●問題の原因を環境や他人に転嫁しない克己心
●未来を想像する楽観性
●情報源を差別しない節操なさ
●目に見えないものを忌避しない感性
●一時の気の迷いや私情に走らない冷静さ
●モノの仕組み、社会の仕組みに対する知的好奇心
●言葉遣いや言葉そのものに対する関心
●礼節感覚
●人間科学と哲学に対するニュートラルなポジション
これらをバランス良く陶冶する思考習慣・行動習慣が常態化していることが必要となる。
もう一度、この図を見て頂きたい。その上で、上記の項目を見て頂きたい。
「自己を知る」ことが正しい「憧れ」への入り口であるとすれば、「憧れる」ということは頭を良くする道そのものであるということが分かるのである。
憧れるという行動はこの図が示す「頭の良さ」の条件をすべて備えていることが分かるだろう。
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