(2) 英雄は具象化する
坂本竜馬の場合 VOL.1
[2:実践編]
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彼は33歳で命を落としました(1867年)。
第一線で活躍していた当時の志士はみな短命ですが、たいていの志士はみな10代で国事に目覚めています。亡くなる時にはすでにその道ではスペシャリストとして名を馳せています。
しかし、坂本龍馬は10代のころは剣道一本。仲間たちが政治論に熱くなっている時、彼はまだ自分の道を見つけられないでいました。龍馬26歳の頃(1860年)、他藩の論客が坂本龍馬の印象をこう語っています。
「龍馬は誠実でなかなかの人物。剣豪でもある。しかし、天下国家の事情に疎い。なんにも知らない・・・」
26歳といえば、当時の感覚で言えば、もう40歳前後のベテランの歳だったでしょう。その歳になってまだ「剣豪」としか評価されていなかったわけです。
しかし、前項でも述べたように、この翌年には勤王ベンチャーに参画して、翌々年にはドロップアウト。
そこからわずか5年で、①株式会社の設立 ②倒幕勢力の組織化・糾合 ③有識者・権力者とのアライアンス ④人材の育成 ⑤新国家戦略の策定 ⑥未開地の調査 ⑦近代的軍隊成立のインフラ整備 といった事業を次々に成し遂げています。
わずか5年で!? どうやって!?
私のような愚鈍な人間にはまったく想像もつきませんが、一つだけ分かることがあります。
彼は、「人間が具体的な物を目にしたり手に取ったときの感動・感激」の効果というものを自然と知っていたのではないでしょうか?
例えば、幕臣で海軍奉行並の勝海舟との師弟関係です。
昨年まで勤王ベンチャーで働いていたかと思えば、突如辞めて故郷を離れ、東京の地で、敵方の有力者に弟子入りしている。
もちろん、「節操がない!」と批判されたようですが、むしろ、そういうことをたった一人で飄々とやれてしまう人間力にみな呆気にとられてしまったようです。怒るよりも感動するのです。
政府の批判をチマチマやっているよりも、一度、政治の仕組みを知るために政治家の秘書になってみようと行動できる、その勇気や決断力や可愛げといったものに、人は感動する性質を持っているということでしょう。
武市半平太の勤王ベンチャー企業が構成員の数にものを言わせて、なかば恫喝的に、時には暗殺という手段で自説を押し通そうとするのに較べて、龍馬はたった一人で価値設計を行い、それを有力者に認めてもらっている。下級武士では一生お目通りのかなわない大身の幕臣(お殿様)に、自分たちと同じ身分の龍馬が私淑しているという事実を見聞きしたときの彼らの衝撃は大きかったでしょう。
こういう「具体的・具象的なものへの感動・感激」がブランド構築の切り札なのです。
龍馬は、頭の中で組み上げた概念を、誰もが手にとって評価できるようにカタチにする具象化能力に優れていました。コンセプトをコンテンツへと変質させる能力のことです。価値設計(コンセプト・メイキング)をしているから、商品設計(コンテンツ・メイキング)ができるのです。
具象化は、人の協力を集める、人の気を集める秘訣でもあります。
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